イッセー尾形の字の部分 演出家森田雄三 語録ブログ
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「友達について」  森田雄三
 

 学校時代、独身で働いている時期、結婚してからでは、何気ない時間を過ごす人の種類は違ってきます。

 当然、学生時代は拘束される時間が少ないから、余った時間を共にする人間の数も、頻度も多いはずです。この無駄な時間を共有する関係を「友人」と呼ぶのではないでしょうか。だから、友人関係の原型は、学校時代にあるといえる。

 

 友人と無駄な時間を費やす以前は、家庭での何と無くの時間を、不思議に思わなかったのです。

だから「友人」というのは、家族のみだった「空気のような親密さ」を、他人に見つける重要な役割を果たしているのです。

 

友人関係を深める第一歩は、夜を共に過ごすことではないでしょうか。男子だと、テントを持って海や山に出かける。女子の場合は、一緒に勉強をして友人宅に泊まる。部活での遠征とか合宿は公的だから、私的にその真似事をしているのじゃなかろうか。中学か高校で、気が合う同性と枕を並べて寝る経験は、大抵の人にあると思う。

 もっと激しくなると、一緒にチンピラのような暴行をしたり、親の金を誤魔化して買い喰いをしたりという、「悪いこと」で友人の絆を深めたりする。簡単にいうと「親からの脱出」の役割を「友人関係」がになっているのです。暴走族が典型でしょうね。

 女子の「ブランドもの集め」や、男子の「万引き」は友人関係を築く為には重要な役割を果たしているのです。「物が欲しい」のではなく、「仲間意識を誇示する」為なのです。「みんなは出来ないだろう」ということで「友情関係」を深め合うのです。

 

親からの脱出は、「性」と「金」です。「性的なつきあい」の相談やレクチャーをしたり、されたりするのが「友人」。小銭であるにしろ「金の貸し借り」を、最初にするのも「友人」。

 

 異性との恋愛関係になる為の、一歩手前の人間関係だから、排他的になるのも確か。誰とでも仲良くしたら「親友」とはならない。学校における「いじめ」の問題もここからきているのです。大抵は数人のグループを作る。一緒にお昼を食べるようになり、学校外でも集まるようになる。

 

 あくまでも「友人関係」は「恋人」が出来るまでであり、親密な異性関係ができると、友人グループから自然に離れていく。昨今は、早熟で恋人を作るのが早いから、グループに恋人が混ざることもあるが、長続きがしないのは、今も昔も変わらないだろう。若い頃は「友人」をとり、回数を重ねるうちに「恋人」に時間を割くようになる。

 だから「友人」というのは、「家に帰っても面白くねーなー」と「いい女(いい男)がいねー」と、嘆くような心情を心おきなく言えることだと、僕は思います。

 

 ですから、就職した新入社員にはダベって過ごす無駄な時間はないし、会社には「先輩」や「上司」「取引先」の情報交換が、親密な同僚となる為には必要不可欠。

一見これは「友人関係」のようだが、沢山のタブーがあるから、打ち解ける関係ではないと思う。教師に向かって「たぬき」とか「タコ」とあだ名で呼べても、会社内では許されないのは、誰でも知っている。

 

 結婚すると、連れ合いの不満は、なかなか外で喋れるものではない。学生時代に「性的体験」をあからさまに口にしたようには、夫婦の性生活は喋れるものではない。夫婦が最も親密なのだから、結婚後の友人関係は、義務的な付き合いといえなくもない。

 

 ですから「友人関係」は、ノスタルジックな回想の中にしかないといえるのではないでしょうか。歌の文句にもあるように「青春時代は、後からしみじみ想うもの……」となるのかも。その時には「友人」とか「友情」とは実感してない場合が多いのじゃないかな。

 

 問題は「結婚していない」「恋人もいない」「勤めに熱が入らない」「部屋に戻ってもつまらない」という条件を抱えた人が多くなったということでしょう。

 これは「学生時代」のようなもので、「友人」が必要だろう。
 まずは「小銭の貸し借り」から始めて、「異性関係のざっばらんな話」をすれば、きっと共通の趣味が見つかります。でも「友達」というのは楽しい関係ではないのです。共通に不満な状態を抱えているとでもいうのかな。

が「友人関係」は、次のステップへ踏み出すバネになるのは間違いありません。学校時代の「友人関係」を思い出せばすぐに分ることだが、楽しい時間を過ごした後、一人になると「ぼんやりした空しさ」に襲われたのは、僕だけではないでしょう。激しい「空しさ」に遭遇したいとの欲求が起こったのを覚えています。

 

友人関係は過渡期の付き合いであり、僕のような年寄りになるとノスタルジーに照れもなくつかれます。なかなかいいものですよ。

今日も中学時代の同級生を、アポなしで訪ねた。電気屋さんだから家にいて、「上がれ上がれ」と、小一時間ほど話してきた。ふらりと行くことのできる友人宅があるのは、豊かな気がする。

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+ 森田雄三プロフィール
1946年・・・石川県白山市に生まれる。 2006年・・・兵庫県高砂市の教師とワークショップで芝居を作る。 スイス国立演劇学校(HMT)の教授となる。           ワークショップに関する本が何冊も出版される。           ワークショップに参加した人達、通称:「森田雄三チルドレン」が、ソーシャルネットワーキングサイト「mixi」(ミクシィ)でも多数存在し、ワークショップでの出来事・森田が話した内容「雄三トーク集」なるコメントがされている。 イッセー尾形の演出家。
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