最近、一人で大笑いをしたのは、平田オリザの発言だ。韓国に行って、放射能まみれの汚染水を海に流したのは「アメリカの強い要請があったからだ」というやつ。
てんてこ舞いの原発処理だから、さまざまな憶測が流れて当然だし、各々が「自分の説」を「真実」と思い込む可能性がある。門外漢の平田オリザに「アメリカの要請」うんぬんを耳打ちした人がいても不思議じゃないだろう。床屋のオヤジなら、官僚筋から聴いたに違いない「米国政府の要請」という説を、得意げに話すのもあり得る。ホラ話のひとつとして、右から左となるだけだ。が、平田オリザは内閣官房参与の肩書で、外国の公式な場所で話しているのだ。
実に、この「米国政府の要請」という説は幼稚といえる。我々が幼児の頃に悪戯をして怒られた折に、「ガキ大将に命令された」と言い抜けするのと似ている。汚染水を流したという近所迷惑を攻撃されて、アメリカという「ガキ大将」に命令されたと言っているのと同じなのだ。
平田オリザは、汚染水の事を「知らなければよかった」と後悔している一人に違いない。ただでさえ多忙なのに、平田オリザに振り回された政府関係者も、「誰だ、余計な事を教えたのは」となっているに違いない。
この平田オリザを内閣参与に任命したのは、鳩山前首相だとか。この前首相の幼児性も、度を越している。普天間基地の移設問題で「腹案がある」といい続けたのも、いじめられっ子の頑張りと似ている。
多分「徳之島に基地を移設」が可能と耳打ちした人がいたのだろう。最後の最後に、徳之島の実力者を訪問してパーとなった。「徳之島移設有力」さえ、鳩山前首相が聞いていなければ、あれだけの大騒ぎにはならなかったろう。
ですから、平田オリザや鳩山由紀夫に「教えなければいい」という、暗黙の了解が国の責任者の間で広がっても不思議じゃないだろう。
このことが分からないと、官首相が「あれだけ非難されている」根拠が分からない。官首相の幼児性が分からないといえる。
原発事故というのは、全ての情報を公開できないに決まっているのです。意図的に隠すというよりも、事実は分からないのです。最悪のケースならば、最悪じゃなくても「20年、30年は汚染地帯には住めない」可能性がある。現にチェルノブイリがそうだからね。
その情報を隠せと、僕は書きたいのではなく、この情報公開には責任者の腹が座っていなければならないのは当然でしょう。政府機関で、その可能性について検討するのも当然だし、その情報公開は少なくとも真剣であらねばならない。が、官首相は、この発言が漏れて、発言の主を「部下のせい」にしてしまったのです。その時に、「住めない可能性がある」という当然を検討していると、正直になるチャンスでもあったのだ。「部下のせいにする」というのは、最も下卑た処理だよね。
建築の仕事をしていた時に起こったことだが、コンクリの外壁を建てると、その自重で地盤沈下が起こる事がある。僕はサッシ屋だったから、窓枠はきっちり水平でなければならないから、ズレを発見する事がある。一方の壁が地盤沈下を起こしているのだ。これを一番最初に発見するのが、サッシ屋といえる。この時にこれを監督に報告するかどうかが難しい。
柔な監督だと大騒ぎして、頭を抱え込んでしまうのだ。ひどいと建て主に正直に話したりする。そうなると、建て物は基礎の杭打ちからやり直さなければならなくなる。
が、長年の経験から、この地盤沈下が収まる事がある。許容ないでの誤差で留まる事もあり得る。
このまま酷くなるのか、ここで留まるのか、が分からないのが現実なのです。現場といってもいいが。人間は全知全能の神ではないから、害が広がるのか収まるのかが、「解らない」事が多い。が、稀に、このような折の判断に、もっともだと従うことがある。その信頼を、我々は権威と呼ぶのではないだろうか。
大病をすると、専門医の判断が重要だというのは、誰しも分かるでしょう。癌の場合、疑いがあれば切除というのが一般的。が、この「疑い」は「薄いグレー」から、「まっ黒」に近いものがあるのは当然でしょう。この「グレー」に対する判断が信頼なのだ。信頼がないと「何でもかんでも切除」される。手足を切られる患者は堪らないよね。
情報というのは「目の前の人」との信頼感を失わせる方向にあるのです。「原発の内実もっとすごい」「東京が汚染されている」などなど、風評といわれるものは今後も続々と出てくるだろう。どれが本当か、素人の我々に分かるわけがない。
が、僕は「日本政府」を信頼しているのですね。敗戦に向かった近代国は、例外なく国民に「嘘の情報」を流している。「負けたことを勝ったと報道」している。そして最後の最後まで戦う。顕著な例がヒットラーで、ベルリンまでが戦場になっている。
日本国は、完璧な敗戦以前に「負けを宣言した国」なのです。軍事下の日本政府は様々な嘘を報道したが、本土決戦の前に降参した。これって信頼に足りることだと、僕は思うのです。外国の実例に比べてですよ、誤解なきよう。
戦後、日本にレジスタンスというか、内戦が起きなかったのも皆さんご存じでしょう。ソビエトにしても、中国にしても、千万単位の自国民を殺している。反対の意見を持った人を粛清せねばならなかった歴史があるのです。
事の善し悪しではなく、パレスチナは敗戦国で、戦勝国のイスラエルに、いまだにテロを行っている。良識者は、繰り返し平和条約を結ぶのだが、直接の被害者は復讐に出るのです。
日本は「復讐を行わない」という、良識の国といえるのではないでしょうか。
我々は「知らねば良かった」という事があったとしても、聞き流したり、愚痴ったりで、解消する能力がある気がする。僕が国の責任者に望むのは、細かな情報はどうでもいいから、大判断の腹だけは持っていて頂きたいということです。
福島原発の放射能に対する敗戦もあり得るのだから。